涙目(涙道疾患)
涙目(涙道疾患)

涙は主に上まぶたの外側にある涙腺から分泌され、目の表面を潤わせてから目頭の上下にある涙点に入り、涙小管(るいしょうかん)、涙囊(るいのう)、鼻涙管(びるいかん)を通って鼻の中へと抜けていきます。この涙の排水経路を涙道といい、涙道のどこかが細くなったり、閉塞したりすることによって起こる眼疾患を総称して涙道疾患と呼びます。
涙道の通りが悪くなると、涙がたまってあふれやすくなったり、目やにが増えたり、ひどくなると涙囊炎を起こし、膿がたまって目頭に強い痛みや腫れの症状が現れます。また、閉塞が長く続くと、炎症や化膿によって癒着が生じ、閉塞部の治療が難しくなってしまうこともあります。
流涙症は「導涙性流涙(涙道閉塞)」と「分泌性流涙」に大別されます。
導涙性流涙は、涙の排水経路である涙道が詰まったり細くなったりすることで、涙があふれてこぼれたり(涙目)、目やにが出たりする病気です。涙が滞って感染を引き起こすこともあります。いつも涙があふれてハンカチが手放せない、涙の量が多くて視界がぼやける、眼鏡のレンズが曇るといった鬱陶しい症状を伴います。
軽度の場合は、常時、涙はあふれませんが、風に当たるなどちょっとした刺激を受けると涙があふれ出てきます。重度になると常に涙が流れ、風に当たれば症状は一層ひどくなり、まぶたの皮膚がかぶれたりします。また、角膜表面が不整になるため、視力に影響することもあります。
導涙性流涙は、多くの場合、原因不明で、40歳頃から発症率が上がり、女性の方がなりやすい傾向にあります。抗がん剤の一種であるTS-1内服薬の副作用で涙道粘膜が阻害され、詰まってしまうことも知られています。また、生まれつき涙道が詰まっている先天性鼻涙管閉塞もあります。
分泌性流涙は、逆さまつ毛(眼瞼内反症)や目を擦ってできた傷(外的刺激)、結膜炎、角膜炎、ドライアイなどが原因で涙が過剰に分泌される状態をいいます。結膜が通常状態よりも弛緩(たるむ)してしまう「結膜弛緩症」なども原因となります。
涙囊は、目頭と鼻の間にあり涙小管から涙が流れ込む袋状の器官です。この涙囊が細菌に感染すると涙囊炎が起こり、目頭や目頭周囲が赤く腫れ、強い痛みを伴います。目頭部分を押さえると粘液や目やにが出てくることもあります。
また、涙道が閉塞している状態で涙囊炎を起こしている場合、白内障手術などの際に切開創から眼球内に細菌が入り細菌性眼内炎を引き起こす危険性があります。こうしたリスクを低減するためにも、手術前に治療しておくことが推奨されています。
涙道疾患は、基本的には点眼薬や内服薬などで改善することはなく、閉塞部を開通させて涙の通り道を確保することが治療の目的となります。
軽症の場合、生理食塩水で涙道を繰り返し洗浄(涙管通水)することで、狭窄部位が拡がり軽快することもありますが、涙道閉塞の多くは手術の適応となり、涙の排水経路を再建していくことになります。手術には、もともとの涙道を再建する手術(涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術)と新しい涙道を作るバイパス手術(涙囊鼻腔吻合術)があります。涙道閉塞の部位と程度によって選択します。
直径約0.9mmの涙道内視鏡を涙点より挿入し、涙道内部の状態を確認しながら、狭窄や閉塞部を押し拡げます。単に拡げただけでは涙道はすぐにまた閉じてしまうため、涙道内にシリコンの涙管チューブを留置して終了します。チューブは2〜3ヶ月留置した後に抜去します。外からはチューブはほとんど見えず、日常生活に支障をきたすことはなく、また、皮膚を切開しないため傷跡も残りません。所要時間は15分程度で、日帰りで受けていただけます。
主な適応は涙道の狭窄あるいは軽度の閉塞で、閉塞期間が短い場合がよい適応となります。涙道の構造が保たれている時期では、大半はこの治療で症状が改善します。
涙道がふさがっている状態が長く続き、炎症や癒着が起こっている場合や、涙道が完全に閉塞している場合、再閉塞をきたしやすい場合は、涙囊鼻腔吻合術の適応となります。涙囊と鼻腔の間にある薄い骨の一部を取り除き、新たなバイパスを作って涙囊と鼻腔をつなぐ手術で、皮膚を切開する方法(鼻外法)と鼻内視鏡を使って鼻の中から行う方法(鼻内法)があります。
目頭の下の皮膚を約2cm切開し、骨の薄い部分を削り取って鼻腔内に入り、涙道とのバイパスを形成します。皮膚の切開創は3ヶ月もするとほとんど目立たなくなります。鼻の外から鼻腔に入るので鼻外法と呼ばれています。
鼻内視鏡を用いて鼻腔から涙道近くの骨を削り取り、バイパスを形成します。鼻外法と比べて適応範囲は狭くなりますが、皮膚切開が不要です。
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